肉汁を信じない

1987 letters | コメントする

今夜、あたしは行ったことがない焼き肉屋に会合で行く予定がある。
そのせいで、今日は肉のことが気になって仕方が無い。
あたしを迷わせているのは、先日ガッテンで紹介した肉の焼き方だ。
家の焼き方と店の焼き方の二種類の話をした。
その、店の焼き方をどうやればいいかはわかったが、理由とか仕組みにかなり疑問がある。
まず、昔から浸透している一回しかひっくり返すなと言う焼き方が間違いなんだと。
肉をひっくり返す度に肉汁が失われるから、ひっくり返すのは一回だけって有名じゃん。
片面をじっくり焼いて、反対側はさっと軽くあぶっておしまいってやつ。
あたしはそれを信じて、何度もひっくり返されている肉をもったいないと感じてた。
せっかくの美味しい肉を、ひっくり返す度に旨味を逃がしてダメにして行く。
きっと世の中の、焼き方にうるさい人はみんな一回までだと思っている。
ガッテンのアンケートもみんな一回と答えている。
堂々と「肉汁が逃げるから」とドヤ顔で答えている。
それをやると、その片面をじっくり焼いた事で肉汁が失われてしまうらしい。
だから、じっくり焼かずにひっくり返す、裏もじっくり焼かずひっくり返す。
そこから何度もひっくり返して好みの焼き加減にする。
その手順はわかったけど、はたしてそれが良い方法かどうかは納得出来なかった。

あたしも含めて、旧来の一回ひっくり返すやり方を信じてる人はバカ舌が証明された。
自分でやってみて比べたわけでもないのに、テレビで見て盲信した味オンチ。
もしくは自分でやってみたのにそれが良いと感じた味オンチ。
我々、一回返し信者は全員バカ舌の味オンチで、どう焼いても違いがわからない。
違いがわからないからこそ、その道のプロにこれが良いと言われたらすぐ信じちゃう。
一回返し信者は騙されていた。
そして今、本当のことを知って目覚めたかのように錯覚し、また騙される。
バカ舌の味オンチで違いがわからないけど、新しい焼き方を信じてしまっている。
何を信じれば良いかは明白だ。
自分の舌で美味しい焼き方が正解であり、テレビの焼き方は参考資料でしかない。
そしてあたしは、どの焼き方でも違いがわからない自分のこのバカ舌を信じる。
つまりもう、正しい焼き方にこだわってもどうせ違いがわからない自分を認める。
気をつけるのは、一度に焼きすぎてこげたらもったいないぐらいの事のみだろう。

焼肉だけじゃなく、あたしは肉汁という言葉に騙されて、わからないくせに信じてた。
肉汁ってどんな味で、肉汁が逃げた肉と逃げない肉を自分で食べ分ける事が出来ない。
ペヤングとUFOは食べ比べてるから、目隠ししてもどっちがどっちか判別出来るよ。
しかし肉汁は、肉を一口食べてこれは逃げてますねとか断言出来ない。
あたしは一回返しを信じたと言うより、肉汁を確かめもせず信じたのだ。
そして良く言う「閉じ込める」も極めて怪しい。
液体の肉汁を閉じ込める調理法ってのが全く持ってうさんくさい。
焼き目を付ければ閉じ込められるなんて、あたしの舌では確かめられない。
だから嘘とも言い切れないしわからないから、仕組みを知りたいと思ってしまう。
そう言う仕組みの部分が、先日のガッテンでは納得出来るほどじゃなかったんだよ。
さも結果ありきの比較や説明をして、そこはいつも通り、所詮テレビだと軽蔑した。
たぶん、一回返しもテレビから教わったはずだよ。
ハンバーグとかでもとにかく肉汁の話をするが、肉汁はテレビの仕掛けた罠かも知れない。

と言うわけで今日は焼き肉屋に行くんだが、もうどう動けば良いかわからん。
ずっと一回返しで食ってたのに、それ以外のタイミングで返す度胸がない。
味の違いがわからないやつに肉をひっくり返させるなんて自殺行為だろ。
あたしなんかが肉を焼いたら肉に謝っても謝りきれない。
自決しますか。

たぶん関連のある記事:

コメントは終了しています。