焼き肉屋で低温調理

あたしが肉汁の事で思い悩んでしまったキッカケは、ガッテン流の焼肉だ。
奴らによると、肉を45℃以上に加熱することで、固いタンパク質が壊れて柔らかくなる。
そして更に加熱すると、それが何℃だかわからないが、肉汁の袋が破れて逃げてしまう。
定番となっている片面じっくり裏面さっと焼きは、片面じっくりの時点で肉汁を逃がす。
だからガッテンは今までの焼き方をやめて、別の焼き方を提案している。
片面を焼きすぎないうちにひっくり返し、裏も焼きすぎないうちにひっくり返す。
そしてまた焼きすぎないうちにひっくり返し、と、何度もひっくり返すのがガッテン流。
あたしはこれの放送を見た時点で、仕組みと結論に全く納得してなかった。
何度もひっくり返したって、どうせ同じくらいまで焼くなら同じくらい肉汁が逃げるだろ。
こんなもんで何が違うのか、出演者も食レポが大袈裟すぎ、と、かなり疑っていた。
ところが、先日嫁の二種のローストビーフを食べ比べ、やっとあたしもガッテンできた。
確かに、比べると肉汁逃がさない版は肉汁逃がした版よりパサパサしている。
ガッテン出演者も肉汁を逃がした肉をパサパサしてると表現したのを思い出した。
あたしはなるべく擬態語で表現しないで、ちゃんと日本語で伝達したい。
パサパサ等という、ボキャブラリーを諦めた表現は嫌いなので印象に残った。
そしてついに自分の実体験でも、肉汁を逃がしたらパサパサになると言うのがわかった。
水分のある食べ物を一回絞ってから食べた時の食感を、パサパサと呼ぶのがふさわしい。

世の中には肉汁を根拠のない理論で閉じ込めたつもりになってる話が氾濫している。
ネットで調べても科学的に納得いく話は少なく、オカルト肉汁論ばかり出てくる。
だが、ガッテンの説明の中から、とにかく高温になると肉汁が出ちゃう話は信じよう。
レンジでチンしたって肉汁は出るんだから、それくらいは実体験で納得出来る。
高温で肉汁が出るから、高温になる前にひっくり返し続ける焼き方なんだろ。
つまりこれって、焼肉の世界に低温調理を持ち込んだって事だよな。
そう、このことを言うために、これだけのために長々と書いている。
焼肉ってのは火で加熱する料理であり、低温とは真逆の高温の世界にいる。
低温じゃ生臭くなっちゃう肉を、極力高温で焼くことで美味しくするのが焼肉の魅力だ。
それをわざわざ、肉汁が出ない程度の低温をキープして焼きましょうって話だろ。
そして、出演者は食べ比べ、高温だとパサパサしてるっていう感想を言うわけだ。
確かにそうだろうがはたして、肉汁が多い低温焼き肉は生臭くないのか。
まさにそのガッテンの同じ番組内で、低温のホットプレートで焼くと生臭いと言ってる。
それに、肉汁を逃がさない温度をキープして何度も返してじっくり焼く手間の問題。
店員さんがそうやって焼いてくれるのは、店員さんが食わずに焼いてるからだろ。
低温でキープするって事は長時間の焼き作業で食ってる暇が無くなりそう。
ネットの情報だと、60℃で10分加熱しろって事になってるし、そんなに焼いてられない。
で、極めつけはあたし自身が、何度も食べ比べないと違いがわからないと言う事。
ガッテン流が焼き肉屋で低温調理をやろうって話だったことは理解出来た。
理解するのにだいぶ時間がかかったが、やっとここまで来れた。
「美味しい焼き方」って言われると、それ以外は美味しくない焼き方みたいじゃん。
そうじゃなく、低温調理で焼く方法もありますよと言う提案だと受け取れば良かった。
そうすりゃあたしは今まで通り、高温調理部分と生肉部分を楽しむ焼き方に戻れる。
それに、あたしのバカ舌では焼き方を変えてもわからない事が自覚できて良かった。
もう焼き方にこだわることもない。
肉汁にこだわらず、焼きすぎた肉も美味いし、ほぼ生の肉も美味いと素直に楽しめる。
もうね、肉が好きすぎて肉だけでここまで迷走しちゃったわ。

で、先ほどあたしは焼肉ではない低温調理に興味を持ち、機材一式を注文した。
お盆休みにじっくりと研究したい。
焼肉は経験上で高温の方が美味いんだから、当面は自分の舌に従って焼く。
自分の舌でわからないくせにドヤ顔で低温焼きを実戦する気はない。
でもこの焼肉じゃない方の低温調理への挑戦は、あたしの舌を変えるかも知れない。
焼肉も低温が良いって言う日が来るかも知れない。

たぶん関連のある記事:

コメントは終了しています。