肉の迷い子
低温調理のための機械とか容器とかを揃えたが、イマイチ満足出来ていない。
何をやっても普通に焼いた方が好きで、買ってしまった機材に複雑な気分を抱く。
ただし肉の事しか考えてないので、肉以外の利用方法は知らないよ。
肉に関しては、65℃未満で調理する事で肉汁が染み出さないギリギリをキープする。
あたしは好奇心で、肉汁を逃がさなければ何が違うのか、知りたくて仕方なかった。
そして低温調理して好奇心を満たした結果、そんなに好きでもなかった。
機材を買ってしまった人は、買って良かったと思い込みたくて肩入れしてしまう。
あたしもかなり偏って、低温調理の良いところを探すかのように考えてしまっている。
良いところも悪いところもあるだろうが、とにかく普通に焼いた方が好き。
いや、普通にって言っても、普通もいろいろある。
だからもっとピンポイントで名指しすると、レアで焼いたステーキが美味い。
レアで焼いたステーキは中が生なので、当然、熱による肉汁の流出がない。
レアとは言え外側は焼けてるので、肉汁は失われてるが香ばしく焼き目が付いている。
外は一緒として、中は低温調理しなくても生で食えるなら生の方が好みだ。
ローストビーフでも、別に中が生でいいなら低温調理の出番はない。
生は基本食べない人が生を味わいたいって言う時に、低温調理は革命児となるだろう。
基本レアで食ってる人には無駄な調理時間でしかないかも知れない。
低温調理ばかり考えてたら、低温調理以外にも肉のことばかり考えてしまった。
盆休みに嫁と子供が泊まりに行って、あたしは毎日、自由な外食の権利を得た。
去年までならおそらくラーメン屋ざんまいだったろうが、今年は肉だ。
いきなり!ステーキの肉を食べ比べて見た。
肉のことばかり考えてググってたら、ヒレもサーロインも大差ないとか書かれてたのよ。
それを見てさすがに言い過ぎだろうと思ったが、実際に食って試したくなった。
結果、ヒレとサーロインは大差があった。
そこまでは当たり前だ。
でもそれは、サーロインの脂に独特のしつっこさがあるよって話。
リブロースとヒレだったら、どっちもサーロインほど脂がない赤身で差を感じない。
同じ店で食うリブとヒレだったら比べたら差はわかるよ。
でも違う店で食う違う牛なら、目隠しで味だけで判断って言われたらわからん。
そして問題は、一番安いワイルドステーキってのが一番あたしの好みだったこと。
高い肉は高い順に柔らかく、安い肉は歯ごたえがあった。
安いワイルドステーキだけは、他よりレアな状態で他より鉄板が熱い。
好みの焼き加減になるまでソースをかけるなって言われる。
その提供されてすぐは柔らかく、食ってるうちに焼けて硬くなっちゃう。
んで、そのワイルドステーキと食べ比べてヒレとか食うと、ヒレはかなり柔らかい。
高い肉は柔らかいんだけど、柔らかい方が好きなのかって話になっちゃう。
あたしは安く歯ごたえのあるワイルドステーキが好きだった。
な、だから低温調理で柔らかく仕上げた肉にはイマイチ満足できない。
高級なヒレステーキのレアの柔らかさを、安いローストビーフ用ブロック肉で実現できる。
あたしは歯ごたえのある肉が好きで、安いワイルドステーキが好みだった。
じゃぁもう低温調理は要らなくね?
ま、要るかどうか知りたい好奇心ってので買っちまったんだけどね。
という盆休みだった。