天ぷらの話
天ぷらの定義はどうにかならないものだろうか。
世の中にはいろんな料理があるわけだが、全く違う二つの物が同じ天ぷらという名で呼ばれている。
一つは、我が家もしくは他所の家庭で食べている、パンみたいな食感の衣が付いたやつで、
もう一つは、外食で食べるオーザックみたいな食感の衣が付いたやつだ。
パンとオーザックはあきらかに違うよな。
あきらかに違う二つの物を同じ名前で呼ばれたら混乱して当たり前だ。
それで、どっちも大好きってんなら問題ないが、どっちかが嫌いでもう一方が好きだった場合、
好きなものを食べようとしたら嫌いなものを食べさせられて、黙って嫌いな物を食べるよりショックが大きい。
いわば、今日は焼肉だよって言われて、植物の肉を食わされるような物だ。
サラダだよとか野菜炒めだよって言われたら平気なのに、焼肉だとか言われると期待しちゃうじゃん。
そのくらいの罪が、天ぷらという言葉にはあると思うんだよ。
あたしはそのパンを巻き付けたようなモコモコ天ぷらがやや苦手だ。
エビならモコモコでもいけるが、かき揚げとか山菜類とかは、
元々あまり食べたくないものをよりいっそう不味くする処置を施した事になる。
それを天つゆで食べるってのもまたすごくあわない。
あれは衣がバリバリの天ぷらにタップリ染み込ませて食べるからうまいのであって、
モコモコ天ぷらに汁をつけてぐっしょりにするくらいなら、衣を取りはらってエビだけ醤油で食べたいくらい。
天丼もバリバリで作るからご飯に合うのであって、パンみたいな物をご飯に載せる天丼は不味い。
こんなにもモコモコ天ぷらとバリバリ天ぷらには差があるのに、
比べて食べさせないと気がつかない人がいるってどういうこっちゃ。
味覚は人それぞれなので、おいしいかどうかってんなら両方同じようにおいしい人がいても良いが、
味じゃなくて食感がモコモコとバリバリで区別がつかないって事は、
パンとオーザックの区別がつかないのと一緒だぞ。
それを一緒くたに天ぷらって名前にされると、天ぷら好きかと聞かれたとき、
基本的には嫌いだがお店のやつならかろうじて食べられます的な話をしなきゃいけなくなって、
そしたらせっかくご馳走してくれる家庭に失礼で、正直に言えないだろうが。
あたしが正直に生きるために、ぜひ、モコ天とバリ天を日本全国で区別して扱って欲しい。
お店に食べに行ってもモコ天かバリ天か聞いてくるくらいに、両方違う料理として確立して欲しい。
家のが不味いって言っちゃうと、まるで料理が下手な製で不味いかのように聞こえちゃうが、
そうではなくて、そもそも違う料理なんだから、外で食べてもモコ天なら不味いし、
家で作ってもバリ天ならうまいんだから、モコ天を作るくらいならバリ天を作ってくれって話だ。
バリ天はむしろ好きだし、出来ればもうモコ天を食べたくないので、
ネットで天ぷらについて検索してみたら、それ専用の粉を使うかマヨネーズで作れってさ。
ほら、やっぱり違う料理だった。
衣の材質が違うのに同じ料理名で呼ぶなよな。
ただ、検索するとサクサクとかカラッとカリッとかいう表現で、あたしの言うバリバリを指すかどうかわからない。
でもサクサクのパンなんて食べたことないから、少なくともモコモコでなくなる事は確かだ。
モコ天でもバリ天でもない第三のサク天になるかも知れないが、それはそれで食べてみたい。