空中元彌チョップ
全国レベルではどうだか知らないが、地上波のチャンネル数が少ない青森県では、
ハッスルマニアが昨日の深夜に放送され、プロレスも変わったなという印象を受けた。
今回はプロレスという物についてグダグダと書いてみる。
昔のプロレスファンっていうのは、アントニオ猪木がモハメドアリと真剣勝負した影響で、
様々な格闘技を融合した最強の戦いが行われていると信じている人だらけだったで、
パフォーマンス重視の効かない大技に心底騙されていた節があった。
格闘技に限らず、プロスポーツってのは優れたアスリートが本気で戦うからこそ、
一般人には出来ないスーパープレイが楽しめるというシステムになっているのだが、
プロレスの場合は本気で戦うことより優先しなければいけない重要な事がある。
地方巡業で毎日のようにショーを行う団体であるという性質上、
リング上で戦う敵は、同じ職場のパートナーであるとも言えるわけで、
本気になりすぎて職場のパートナーに怪我を負わせ、試合が出来なくなったら大問題だ。
パイプ椅子で殴ったり、時には血を流したり、素人には過激に見える事をしていても、
次の日にはまたリングに上がれるという、ケガしない格闘技がプロレスなのだ。
これは前田がこのプロレスのシステムを裏切り、長州にケガさせるまでは安泰だった。
その時点から、本気で戦う総合格闘技路線って言う物が注目されるようになり、
コマンドサンボ、シューティングなど、実践的な格闘技が流行るようになる。
そして遂に、最強の格闘技を決めるアルティメットが行われ、
世界中から集まった猛者を、無名で小柄なブラジル人が簡単にねじ伏せる。
その世界最強の男は、インタビューで「ウチの兄貴はもっと強い」と発言し、
実際に信じられないくらい強かったから、それがグレイシー柔術の大ブレイクとなる。
と同時に、流行の総合格闘技では全然勝てない、プロレスラーの株は大暴落する。
さらに、素人の間にも格闘技の真似事をしてみる人が増えたことで、
多少なりとも格闘技をやれば、どの技が痛いか痛くないかはわかるもので、
リアルを求めるファンは、最強とはほど遠いプロレスから離れていってしまった。
だが、本当にリアルを求めるなら、打撃しかしちゃいけないケンカは存在しないし、
3分ごとに休憩するケンカだって存在しないわけだから、K-1だってウソなわけで、
本当にケンカになったとして、それがたまたま1対1になる方が不自然であって、
総合格闘技を、ルールの中で最大限に本気で戦うスポーツととらえるならば、
相手にケガさせないというルール内で最大限に本気の、プロレスだってアリなのだ。
格闘技好きで、別物としてプロレスも好きって人は確実にいる。
さて、ようやくハッスルマニアの話になるが、「何で俺様が素人と」とか言ってたが、
ハッスル的には元彌はVIPであり、本業以外でケガさせる事はあってはならない。
プロだからこそ元彌にケガさせずにショーを見せられるんだ、と納得出来たはず。
もう一人の素人HGは、学生プロレス経験アリということで、技のくらい方はうまい。
ドロップキック、フランケンシュタイナーといった、飛ぶ心構えも出来ていてさすがだ。
しかし体が硬いのか、技が極まった瞬間の体の伸びが悪く、素人の限界を感じた。
同時に、何気なくやっているプロの偉大さが、素人との比較を通じて感じられた。
でも、面白かったかと言えばつまらなかったし、とんだ茶番だった。
その、ケガさせない前提で最大限に本気っていう面白さとか、
たとえ八百長で決まってる試合でもちゃんと迫力ある戦いを披露する面白さは、
やっぱりプロ同士で、お互いがケガしないようトレーニングして、
相手の体の強さを信じて初めて繰り出せる派手な大技があってこそであり、
プロレスの魅力を封じてまで有名人をリングに上げる姿勢には疑問を感じる。
でもそれで成功しているんだから、やっぱり世の中変わったと感心するしかない。